鳥羽志摩の海女さんが外国人に人気急上昇、さらに後継者問題解決への糸口にもなる?!

三重県の鳥羽志摩では海女漁が古くから盛んだ。ここ最近は、海女文化の情報発信に力を入れており、アジアを中心とした外国人観光客が急増している。一方で海女漁の後継者不足という将来的な問題にも直面しており、課題解決に向けた意見交換の場として「海女サミット」を開催するなどの取組も進めている。

鳥羽市国崎町の老の浜で「御潜神事(みかづきしんじ)」の再現行事が行われた
鳥羽市国崎町の老の浜で「御潜神事(みかづきしんじ)」の再現行事が行われた

ポイント:

・海外商談会出展による海外への海女文化の紹介
・外国人に海女小屋を楽しんでもらうための新しい取組の実施
・海女サミット開催を通じた海女文化の継承


 

■海女小屋が外国人観光客の大人気スポットに!

朝、海女さんが海から獲ってきたばかりの新鮮なあわびを網焼きにして、外国人旅行者にふるまう。これは三重県鳥羽市の海女小屋「はちまんかまど」での一コマである。

ここ最近は海外からの旅行者が増えている、と海女小屋「はちまんかまど」を運営する(有)兵吉屋の代表取締役社長、野村一弘氏は話す。一番多いのは香港からで、次いで台湾、マレーシアとアジアからの旅行者が多い。団体ツアーと個人客では半々ぐらいで、関西からの周遊が多いという。

はちまんかまどは2012年に三重県の海外誘客課と県内の旅行関係事業者と一緒に、台湾や香港で旅行商談会に参加した。そこで現地の人に興味を持ってもらえたことをきっかけに、外国人誘客に力を入れ始めた。
当時は円高の影響もあり、誘客効果は上がらなかったが、商談会の効果と円安での為替メリットが旅行商品に反映されるや、せきをきったように外国人の利用者数が伸びていった。2013年が493人、更に円安が進んだ2014年が2,932人、そして2015年が3,869人、G7サミットが開催された2016年が6,320人となったのだ。

海女小屋が人気の理由は2つあると野村代表は語る。一つは、現役の海女さんの接客対応だ。現在、はちまんかまどには現役の海女さんが20名いる。高齢化しているものの、みなさん大変元気で、外国人に好評である。そしてもう一つは、食の楽しみである。生きた貝類を海女が目の前で網焼きしたものをアツアツで口にほおばるのが新鮮で、大変美味しいと評判だ。はちまんかまどでは、食事とあわせて海女の民謡と踊りをお客さんに披露する75分のコースを用意しており、このコースが人気となっている。

海女小屋「はちまんかまど」での記念写真
海女小屋「はちまんかまど」での記念写真

はちまんかまどへはアジアだけでなく、欧米からの観光客も立ち寄る。外国人観光客の中でも特に欧米人は世界的に希少な海女さんの歴史的な話を熱心に聞いてくれるそうだ。女性が素潜りで行う漁は、日本の他には韓国の済州島にしかない珍しい伝統漁法である。まわりが海に囲まれていて、入り江など、サザエやあわびを収穫しやすい環境が整っているのもこの地域で海女漁が普及した理由の一つである。

外国人観光客の来訪が増えたことから、はちまんかまどでは、英語対応が可能なスタッフを採用し、鳥羽駅から送迎バスを走らせるなど、さらなる受入れに向け、新しい取組みを始めている。

■「海女サミット」での情報交換、文化の継承

近頃、インバウンドで盛り上がりをみせている海女小屋ではあるが、将来的には海女漁に携わっている海女自体の後継者不足に直面するという問題も抱えている。
鳥羽市と志摩市の海女操業人数は1949年の6,109人から2014年には761人と8分の1に減少しているのだ。海女の主要漁獲物であるあわびを始めとした水産資源全体が減っていて、生活が成り立ちにくくなったのも大きな要因である。

同じような悩みは全国各地で抱えており、それを共有すべく、海女さんの交流と海女文化の継承を目的とした第一回目のサミットが2010年に「日本列島“海女さん”大集合」というタイトルで開催された。2016年11月で7回目となった。その後、鳥羽市と志摩市が1年ごとに持ち回りで主催している。(2013年には石川県輪島市でも開催)
サミットでは、若手の海女さんに誇りを持ってもらうことも重要視しており、例えば、いかに海女漁が歴史ある貴重な文化であるかを改めて認識する機会として、有識者による講演などの取組をしている。また、サミットに参加した彼女たち自身が、ベテランの海女さん達と交流する中で刺激を受ける機会にもなっている。

全国から一同に会した「海女サミット2016」の際に行われた記念放流
全国から一同に会した「海女サミット2016」の際に行われた記念放流

サミットがスタートする前までは、それぞれのエリアごとに海女さんが活動していたが、全国一同に会することで、古来の伝統文化を守っていこうという機運になったと言う。海女さん達の交流では、技術的な話や売り方など、各地の良い点を持ち帰って取り入れるそうだ。また、海藻類を自分たちで加工して、海女ブランドの付加価値をつけて売るなど新しい取組を行う地域も出てきている。

直近2016年に実施された7回目のサミットの宣言では、海女漁が「資源の減少と後継者不足により、後世に残すことが困難」とし、国や県、市民への理解と協力も呼び掛けた。今後、岩手県久慈市、石川県輪島市など海女漁が行われている日本の地域が連携してユネスコの無形文化遺産の登録を目指していく。

■海女というキラーコンテンツを地域全体で盛り上げる!

2015年に鳥羽市では、漁業者(鳥羽磯部漁業協同組合)・観光業者(鳥羽市観光協会)・行政(鳥羽市)が連携して「漁業と観光の連携促進協議会」を立ち上げた。水産業は地域の主要産業であり、観光と連携して盛り上げることで、地域ブランディングを高める活動につなげたいのだ。
元来、海女文化が深く根付いている鳥羽市では、他部署間でもコンセンサスを得やすい土壌があったとのことだ。そして現在、海女漁という伝統産業に、観光という新しい視点を入れて地域全体で盛り上げようと取り組んでいる。

世界的に希少価値のある資源を後世に残すため、観光という切り口が有効な手段になっている。インバウンドは海女文化の継承に一役立てるかもしれない。

海女さんが素潜りしてアワビを採る
海女さんが素潜りしてアワビを採る

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です