立山黒部では、通過型観光から滞在型観光への転換を目指す

立山黒部アルペンルートが年々外国人に人気のコースになっている。20mに迫る雪の壁となる「雪の大谷」が特に人気だ。外国人観光客の中でも個人客が増えており、今後は富裕層を含め多様化するニーズに対応した観光地づくりが求められる。富山県では、そのための検討会を立ち上げ、様々なプロジェクトを推進している。

雪の壁となる「雪の大谷」が外国人にも大人気
雪の壁となる「雪の大谷」が外国人にも大人気

ポイント:

・アジアからの誘客に成功し、次なる高みへ進む
・立山黒部を世界水準の滞在型・体験型の山岳観光地にするため、世界ブランド化に向けた取組みがスタートした


■20mに迫る雪壁、雪の大谷を目当てに人気上昇

立山黒部アルペンルートでは訪日外国人客数が伸びていて、2017年の外国人観光客数は対前年比で9%増の26万3,000人で、14年前の約11倍となり、過去最高に達した。このデータを発表した立山黒部貫光(株)によると、継続的な海外でのPR活動に加え、最近ではJRと連携した海外客向けの割安切符「立山黒部オプション券」の販売により、個人客が増加したことが大きいという。

国・地域別では、台湾からが13万6,900人と最も多い。他には韓国や香港からが増加傾向であり、特に香港からの観光客数は3万2,500人と14年前と比べ250倍になっている。

立山黒部アルペンルートのハイライトのひとつ黒部ダム
立山黒部アルペンルートのハイライトのひとつ黒部ダム

一方、日本人を含めた立山黒部アルペンルートの訪問客全体では、バブル期の1980年代後半をピークに約140万人から減り続け、東日本大震災の2011年以降、なかなか年間100万人まで回復することができず、2017年は92万9,000人であった。人口減少社会を迎え、日本人観光客の大幅な増加を見込むことが難しい中、富山県では外国人観光客数の更なる増加を図る必要があると考えている。

外国人旅行者が特に多い時期は、春から初夏にかけてだと担当者は言う。4月の立山黒部アルペンルート全線開通から6月上旬まで「雪の大谷」と呼ばれる巨大な雪の壁が作られ、それを目当てとする客が多いからだ。立山の雪量は世界有数であり、壁の高さは4月頃で10数m、雪の多い年には20m近くになることもあり、他ではなかなか見られない光景だ。海外での商談会・展示会への参加など、これまでの積極的なプロモーションが実り、世界最大の雪の壁を一度は見たいと、世界中から観光客が集まっている。

■「立山黒部」の本来の魅力が十分に伝わっていない面も

立山黒部アルペンルート(※)を訪れる観光客は一般的に、富山側から来る場合には富山県内で前泊し、アルペンルートを通過して長野県側に抜ける。逆に長野県側から来る場合は、大町温泉のほか、長野市内、白馬、松本に宿をとって、富山県側に抜ける。

(※)立山黒部アルペンルート:https://www.alpen-route.com/about/

行程上、アルペンルートの最高所にある室堂駅周辺で昼食をとることが多いが、食事時間が1時間程度しかないことが多く、昼食後はすぐに次の場所へ移動となる。
室堂は、立山連峰のベースキャンプとも言え、車で一番最寄りの高原にあり、「本当は室堂あたりに泊まってゆっくりと立山の自然を満喫してもらいたい。」と担当者は言う。「山の天候は変化しやすく、絶景を見ずに帰ってしまう方が多いです。半日ここにとどまれば、天候が回復してくる可能性が高い。」とのことだ。悪天候では「立山黒部」の雄大さが伝わらない。本来天気が良ければ、雪渓のある山々を望め、360度の大パノラマとなるので、そのためにもゆったりした時間が必要なのだろう。

秋の紅葉シーズンにロープウェイを使って移動する
秋の紅葉シーズンにロープウェイを使って移動する

そこで、立山周辺での滞在を楽しめるような環境づくりが必要だという。まずは1~2泊程度の滞在を促進し、将来的には1週間程度滞在してもらえるような環境づくりを始めたいとのことだ。室堂に泊まることで、雪渓、夕焼け、雲海、星空を楽しむことができ、朝日のご来光を仰ぐことができる。

もっとも、既に室堂には何軒かホテルがあり、国内ではレベルが高いといわれている山小屋もあるが、短期の宿泊客や登山客がメインターゲットで、長期滞在できるような山岳リゾートとは異なる。「最近は、プラスアルファのサービスを求める外国人が増えた」と担当者は言う。ここに来る個人の外国人客には富裕層が含まれていて、ラグジュアリーな宿泊施設を求める人たちも多い。

■滞在型・体験型の山岳観光地に!世界ブランド化に向けた会議が発足

2017年6月に、富山県や関係する団体、大学や企業等の有識者で構成される「『立山黒部』世界ブランド化推進会議が立ち上げられ、北陸新幹線の開業や、訪日外国人、特にその中での個人旅行客の増加など「立山黒部」を取り巻く状況が大きく変化している中、世界ブランドとしてさらなる高みを目指すための様々なプロジェクトが進められている。

「立山黒部」世界ブランド化推進会議が2017年に設立
「立山黒部」世界ブランド化推進会議が2017年に設立

会議では、例えば「立山黒部には、世界水準の洗練度の高い宿泊施設が必要」、「立山エリアと黒部エリア(トロッコ電車が走るエリア)との周遊性を向上させることが重要」等の意見が出され、これらの意見を実現するため、様々なプロジェクトが進められている。

ハード面ばかりではなく、滞在プログラムを提供する事業者やガイドについても、「ニーズに応じた魅力的で多様な滞在プログラムの充実が必要で、そのためのガイドの確保も必要」、「旅行者が滞在している間、暇を持て余さないよう楽しんでもらえるプラグラムが求められる」などの意見が挙がり、環境省の支援も受けつつ、滞在プログラムの充実に向けた取組が進められている。

2017年8月には、県や関係団体で構成された視察団がスイスのツェルマット等の山岳リゾートを訪れた。現地のホテルに宿泊し、鉄道やロープウェイなどを実際に体験した視察団参加者は「山岳部であってもレベルの高いサービスが提供されている印象を受けた。通常、山岳地域の場合、水、お湯、電気など、どうしてもサービスが劣るものだが、スイスは遜色がなかった。規模の大きいショッピングモールまであった。」という。
また、通年営業していて投資回収が早いのが「立山黒部」との大きな違いだ。「立山黒部」の場合は世界でも類のない豪雪地帯であり、冬季は閉山中で一般の方は訪れないため、宿泊施設も営業していない。

ツェルマットの取組を参考しつつも、やはり「立山黒部」の特異で厳しい自然環境や、歴史や文化、防災などの様々な魅力を最大限に活用し、世界ブランドとして、「何度も訪れたい観光地」となるよう取組を進めていく必要性を実感したそうだ。

2017年度に引き続き、2018年度も様々な取組を推進していくという。「立山黒部」の世界ブランド化への取組を見守りたい。

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

 

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