多治見市へ、外国人が1か月間の住み込み「陶芸」修行に!

岐阜県の多治見市は、陶磁器の産地として古くから栄え、窯元も多く点在する。近隣の土岐市、瑞浪市と連携した「国際陶磁器フェスティバル美濃」を3年に1度開催している。フェスティバルの出品数は日本国内からよりも海外から方が多いという。そのような陶磁器の町に、海外から1か月間寝泊まりして陶芸を習いに来る外国人が増えている。

シンガポールからのゲストがロクロに挑戦中
シンガポールからのゲストがロクロに挑戦中

ポイント:

・1か月間の本格修行で腕を磨くプログラムが人気コンテンツに
・国際的な陶磁器の町だからこそ、体験に価値がある


■キャンセル待ちになるほど人気の陶芸ステイ

岐阜県多治見市は美濃焼の産地として古くより栄えてきた町だ。近隣の土岐市や瑞浪市なども含めた一帯に窯元が多く点在している。

その多治見市では、陶芸の勉強をするため、外国人が1か月間寝泊りしながら修行するプログラムが人気だという。

指導しているのは、地元在住の陶芸家・柴田節郎さんだ。外国人は、作陶所兼宿泊所に寝泊まりし、自炊しながら陶芸にいそしんでいる。

外国人のゲストに実際にお茶をもてなし抹茶を楽しむ
外国人のゲストに実際にお茶をもてなし抹茶を楽しむ

柴田さんは、陶芸教室「杜の土」を主宰し、2012年に滞在型作陶施設「HOME OF CLAY ARTS(陶芸の家)」を開設した。通称「HO-CA」。東濃弁の「ほうか(そうか)」と掛け合わせた。1階が陶房、2階が和室と洋室で2部屋の宿泊施設だ。

施設のオープン後は、日本人の利用者のみだった。2013年に、ちょうど外国人向けに陶芸をテーマにしたツアーを検討していたという東京の旅行会社を紹介してもらう機会が偶然あり、実際に視察にも来てもらった。

その翌年からツアーが始まり、同旅行会社を通してシンガポールや香港など東南アジア方面に加え、米国や英国、オランダなど海外からの利用者が増えている。最近はリピーターや帰国した人からの紹介者が増えたという。また、2016年9月には市の「まちづくり活動補助金」を利用し、工房近くの空き家を改装して二つ目の「HO-CA」を作り、オープンスペースも設けた。

陶芸を学びに来る外国人のための宿泊施設が不足していると、主宰の柴田さんが多治見市役所に相談に行ったところ、この補助金の制度を教えてくれたという。

■陶芸の町だからできる本格修行でレベルアップ

釉(うわぐすり)の塗り方を指導する柴田さん
釉(うわぐすり)の塗り方を指導する柴田さん

参加者は単身者が多いが、夫婦や親子で来られる場合もある。ほとんどの方が、母国で陶芸の経験があり、ここで1か月間集中的に勉強して、かなり技術を上げることができる。
帰国後、シンガポールで陶芸教室を開いている元参加者もいるほどだ。

柴田さんは「日本の焼き物を学びたい、特に茶器を作りたいという外国人が多い。彼らにとって日本は憧れの国と言える。」と語る。世界中で陶芸教室が増えていて、その中で日本はアドバンテージが高い。日本は登り窯や材料、陶芸家が多い。窯や釉(うわぐすり)など、焼き物の町に行かないとない設備があるのだ。また他の窯元にも案内して見学させてもらえる。
多治見はすべてが揃っていて、美濃焼は織部焼の他、バリエーションが豊富であることも魅力だ。

この教室では、あらかじめ1カ月単位のカリキュラムを組むが、最初の1週間ほどで参加者の技術を見極め、レベルに応じてアレンジしてくれるという特徴がある。

課題として出すのが、1kgの粘土で高さ20cmのまっすぐな筒づくりである。これをロクロでつくるのが難しく、いっさいのごまかしが利かない。この技術を身につけると、応用が利くようになり、短期間で参加者は腕を上げるそうだ。

アトリエに併設の釜に火をつけいよいよ最終工程へ
アトリエに併設の釜に火をつけいよいよ最終工程へ

また、陶芸教室には英語が堪能な3名のボランティアスタッフがおり、交代で参加者をサポートしている。

近隣の友人がサポートしてくれるのも助かる、と柴田さんは言う。友人ご夫妻のもてなしによる家庭料理や茶会が行われることもある。参加者は普段の日本人の生活に触れる機会を楽しんでいる。

■世界に向けた陶磁器のブランディング戦略

多治見市は、現在も陶芸の町としてのブランディングを進めている。
近隣の瑞浪市・土岐市と連携して、「国際陶磁器フェスティバル美濃」を開催している。1986年から3年に1度開催する世界最大級の陶磁器の祭典だ。世界の大きなイベントは、他にイタリア、韓国、台湾であり、いずれも陶磁器の生産が盛んなエリアで開催される。「土と炎の国際交流」をメインテーマに、陶磁器のデザインと文化の国際的な交流を通じて、更なる陶磁器産業の発展と文化の高揚を目指すというもので、多治見・土岐・瑞浪の3つの市から職員がそれぞれ選抜されて、事務局を担っている。

海外での認知度も高く、昨年(2017年)の大会には、60の国と地域から1,337名の応募があり、作品数は2,466点で過去最多を記録。そのうち外国人によるものは1,467点と半数以上を占めた。現地の専門学校や陶芸教室等、フェスティバル開催の地道なプロモーションによるところが大きい。これまで蓄積された応募者や配布先リストを持っているのが強みだ。

前回(2014年)は、38日間の開催期間中に18万人が来場した。今回は週末に雨が多かった影響もあり、20万人を見込んでいたが、14万8千人となった。
出品数は日本人より多いものの、外国人の来場者数の増加につながっていないのが、今後の課題だと主催者。

出来上がった作品がアトリエに並べられた
出来上がった作品がアトリエに並べられた

陶芸の町だからこそ、外国人はここで修行したいのかもしれない。もっとも他にも陶芸の町は多くあるが、知られていないのが課題だろう。「HO-CA」での修行ツアーの成功は地域のプロモーション戦略と柴田さんの思いが上手くマッチした事例である。柴田さんは、70歳を過ぎてなお、作陶指導に積極的だ。益々の発展を期待する。

 

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

 

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