地理的優位だけじゃない! 3年連続外国クルーズ船寄港数1位の博多港の努力

2014年~2016年の3年間、外国クルーズ船の寄港回数が日本一となった博多港。アジアクルーズの巨大市場である中国に近いという地理的優位性がとかく注目されるが、福岡市は2006年頃から、海外のクルーズ船会社と市の上海事務所との協力体制を構築し、港湾の整備などハード面においても地道な努力を行ってきた。その経緯を振り返ると、クルーズ船誘致の大きなヒントが見えてくる。

埠頭の拡張工事によって、大型クルーズ船が並列で着岸可能に
埠頭の拡張工事によって、大型クルーズ船が並列で着岸可能に

ポイント:

・クルーズ船会社に寄り添いながらの寄港地運営
・港湾整備、出入国審査を行うクルーズセンターなどハード面の整備
・「クルーズNAVI」システムでのツアー行程の多様化&分散化への挑戦


■中国拠点のクルーズ船会社に柔軟に対応して誘致に成功した福岡市

2014年99回、2015年245回、2016年312回と、3年連続で外国クルーズ船寄港回数が日本で1位となった博多港。2016年における国内全体での外国クルーズ船寄港数1,444回のうち、約2割を博多港が占めている。毎日のように寄港している外国クルーズ船のほとんどは中国発のものだ。韓国(釜山、チェジュ)と九州を周遊する行程が一般的で、上海発であれば4泊5日、天津発なら5泊6日と、中国人の休暇事情に適したショートクルーズの行程を組むことができるのも人気の一因だ。

2016年一年間の統計では、福岡市の外国人入国者数(福岡空港+博多港)約257万人のうち、クルーズ船乗客は約78万人と約3分の1を占めている。

一方で、クルーズ船会社であるイタリアのコスタ・クルーズやアメリカのロイヤル・カリビアン社は、2006年頃から上海に拠点を開設して、マーケティングをスタートした。その当時から、福岡市上海事務所には、船会社側から博多港を中心とした受入について相談があり、港湾の利用条件や寄港地ツアーなどを共に検討し、進行してきた。

クルーズ客も博多どんたくに参加してお揃いのハッピを着る
クルーズ客も博多どんたくに参加してお揃いのハッピを着る

太鼓の演奏をはじめとした歓迎、お見送りのセレモニー、福岡中心部での歓迎幕や案内版の設置、中国語が話せるボランティアガイドを案内所や施設に配するなど、福岡市内の街づくり協議会や商業施設などとともに試行錯誤をしながら受入体制を充実することに、福岡市は常に予算と人材と時間と努力を投下してきた。

「『中国に地理的に近く、ラッキーな都市』と言われることもありますが、各船会社が中国でビジネスを始めた時から一緒になって模索し、手探りで体制を整えてきました。多くのクルーズ船客が訪れてくれるようになった現在、まだまだ解決できていない課題はありますが、ひとつずつ対応を進めています。福岡で培った知識やノウハウは『福岡クルーズ会議(※1)』等により日本全国の他自治体や受入先に共有し、日本全体のクルーズの活性化に貢献したいと思っています」と、福岡市観光コンベンション部クルーズ課の小柳課長(2009年当時福岡市上海事務所所長)は語る。

※1:福岡市が主催して、海外の主要クルーズ船社が加盟するクルーズライン国際協会(CLIA)北アジアが共催する会議

クルーズ会議では、量から質への時代について講演があった
クルーズ会議では、量から質への時代について講演があった

■大型化する船舶、続々登場する新船に対して、港湾整備、クルーズセンター新設で対応

2008年に博多寄港を含むクルーズ商品が中国で販売されて以降、2011年の東日本大震災、2013年の尖閣諸島問題などで減少が見られたが、その後中国では「クルーズは新しい旅行の形」として定着してきた。「巨大で豪華な設備のホテル」に宿泊しながら、韓国や日本の各寄港地で観光、ショッピングができ、しかも料金に宿泊、移動、食事代が含まれて、1日70$前後とコストパフォーマンスが高く、家族旅行やインセンティブトリップ(※2)にも適しているのが要因だ。
特に2014年以降、中国クルーズ市場は、16万トン級以上、乗客定員4,500人以上といった「船舶の大型化」、2017年のノルウェイジャン・クルーズの新規就航など、ますます熱気を帯びている。

※2:企業で成績優秀なスタッフへの報奨旅行のこと

しかし、大型化船舶に対応できる日本の港湾はまだまだ少ないのが実情だ。莫大なコストがかかる岸壁や港湾の整備は、一朝一夕には進めることは難しい。福岡市はそのハード面の利便性に対しても、着岸料や水先案内人などのさまざまな港湾業務に対しても、柔軟に一つ一つ対応してきた。
福岡市も2009年頃、何も設備がなく寂しい岸壁に、絵を描いて装飾したコンテナを設置し案内所にしたところからスタートして、2015年7月には、中央ふ頭にクルーズセンターが完成するに至った。CIQ(※3)棟には20の出入国審査ブースを設置でき、乗客の利便性が急速に高まった。2017年5月には中央ふ頭の桟橋の拡張工事を実施予定で、16万トン級の船の受け入れが可能な岸壁が2つになる。さらに、2018年夏には,22万トン級の船舶受入も可能となる。

※3:CIQとは、税関・検疫・出入国管理の総称

■多様な寄港地ツアーの提案と「クルーズNAVI」システムで課題解消へ

クルーズ客を乗せたバスが商業施設の周辺で渋滞となる
クルーズ客を乗せたバスが商業施設の周辺で渋滞となる

現在、中国発クルーズ船の乗客は、9割以上は中国人となっている。彼ら中国人旅行者は、観光やショッピングを含んだ寄港地ツアーに参加している。福岡での一般的な寄港地ツアーパターンは、博多港に朝到着し、バスで福岡タワーや太宰府天満宮などの観光地、免税店などショッピングスポットを2箇所ほど巡り、夕刻に船に戻るというものだ。
4,500人程度の乗客がいれば、40人乗りのバスが100台以上必要となる。クルーズ船2隻寄港の場合は、200台近くのバスが博多港から出発するので、似たような行程だと、交通混雑や駐車場不足が課題となってきていた。

そこで、福岡市クルーズ課は、課題解消のために、新たな観光スポットの提案はもちろん、「クルーズNAVI」(※4)への登録促進を行っている。「クルーズNAVI」とは、ランドオペレータが各観光スポットの駐車場利用時間などを入力するもので、2016年3月から運用が始まり、2017年2月にリニューアルした。

※4:登録事業者の業務用のため一般には非公開

ツアー実施日の5日前から入力でき、予め定められた規定台数を超えると申請・入力ができないようになっている。これで、1スポットへの一極集中や周辺の交通混雑の解消へ弾みをつけている。

また、こうした団体ツアーばかりでなく、港と都心部をシャトルバスでつないで自由に回遊できるフリープランを造成するよう、福岡市は、船会社や旅行会社、ランドオペレータに働きかけている。
一方、博多港クルーズ船受入関係者協議会(※5)は受入側のエリアマネジメント組織(※6)、福岡市内および近郊の商業施設の連携組織であるFUKUOKA WELCOME CAMPAIGN(※7)などの民間との調整を行っている。

※5:キャナルシティや太宰府天満宮などの施設をはじめ、旅行代理店、行政、福岡県バス協会など約70施設・団体等が加盟
※6:We Love 天神協議会、博多まちづくり推進協議会の2つ
※7:春節の時期に地域の商業施設が集まって開催する外国人向けキャンペーンを担う任意団体

出港での見送りもおもてなしの一環だ
出港での見送りもおもてなしの一環だ

中国発だけでなく、世界のあらゆるカテゴリーのクルーズ船を誘致できるような事業も、福岡市ではすでに進めている。その挑戦へのスタンスは、クルーズ船誘致に取り組む日本全国の自治体の大きなヒントになるのではないだろうか。

 

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です