田辺市熊野ツーリズムビューローが、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラとの聖地巡礼をテーマにした共同PRを展開

田辺市熊野ツーリズムビューローは、スペインの巡礼街道の終着地、サンティアゴ・デ・コンポステーラ市観光局との共同プロモーション協定を結び、巡礼というテーマで欧米人が熊野を目指して来るようになった。スペイン人の来訪者数は、国別ランキングでは、順位が年々上昇している。熊野古道の世界遺産登録と地元の田辺市の合併を機に新しい取り組みが始まっている。

今回のポイント[事例紹介:田辺市熊野ツーリズムビューロー]

熊野古道というキラーコンテンツを世界にアピール
官と民の中間的存在だからこそ、自由度が高い

和歌山県田辺市には観光協会が、5つもある。全国でも珍しいケースだろう。
これは、2005年5月の5つの自治体による町村合併が起因していて、それぞれの団体が残ったのだ。ひと口に観光協会といっても、組織ごとに活動目的も予算規模も違うため、利害関係を調整することができなかった。

そこで、誕生したのが、熊野古道全域をカバーする田辺市熊野ツーリズムビューローだ。市から観光プロモーション全般を委託される団体だ。

前年の2004年7月に熊野古道が世界遺産登録を果たし、まさにこれからという大事なタイミングだった。
当時、危機感を持ったのが田辺観光協会に在籍していた多田稔子(現・田辺市熊野ツーリズムビューロー会長)さんだ。

写真右が多田会長、調印式にて
写真右が多田会長、調印式にて

外国人にとっては、どこの自治体であるかに関心はなく、『熊野古道』へ観光に訪れたいだけなのだ。

田辺市熊野ツーリズムビューローは、市の合併を機に、5つの観光協会を構成員に設立。1年間に渡って準備が練られ、熊野古道を歩いて楽しめ、世界に通用する観光資源に育てることを目標にした。特にFIT(個人旅行)に絞ったのだ。

当時、世界遺産ブームで大量の観光バスが乗り付けていたが、地元からは、これでは本当の熊野古道の良さを理解してもらえない。やがてブームが去れば、閑散となることが懸念された。

そこで、マスであること、ブームになることを目指すのではなく、個人旅行でやってきた人がじっくり楽しんでもらえる取り組みを目指した。
本来は熊野古道を1日、または数日かけて歩き、その沿道の民宿に泊まり地元との交流も良さの一つだ。

ところで、ターゲットとした訪日観光の受入成功の要因は何だろうか?

そこには、2つあるという。

1つが、プロモーションだ。

「巡礼旅」というテーマに絞った海外プロモーションを実施。

2007年6月のこと、和歌山県の紹介でサンティアゴ・デ・コンポステーラ市観光局のフラビア氏が来られた。熊野三山を含む南紀(熊野)エリアを案内。
もともとは、三重県伊勢市よりサンティアゴ・デ・コンポステーラ市に「姉妹提携・共同プロモーション」の話があり、その調査のための来日だった。伊勢市を訪れた感想は、あまりにも大量送客型のツアーが多く、同市が目指す観光ではない。また、観光プロモーションを行政内でするのではなく、田辺市熊野ツーリズムビューローという外部組織に委ねている点が共通していたことから、連携するなら田辺市だとそのとき判断したようである。

その後、相互に調査した結果、2008年10月に、調印式・共同記者会見がサンティアゴ・デ・コンポステーラ市で実現した。

2009年7月に世界遺産熊野本宮館オープンし、そこには、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼道の常設展示。サンティアゴ・デ・コンポステーラの業者向きガイドブックの共同のプロジェクトなど、これまで相互のプロモーションを実施している。

巡礼の道というジャンルが世界に認められつつある。それは、宗教を超えたつながりだ。実際に日本からもクリスチャンではないが、スペインの巡礼の道を徒歩で踏破する旅行者も増えている。

また欧米向けのFIT市場を強化する際に、外国人目線が必要だと話が持ち上がった。
そこで事務局長の紹介で、旧・本宮町の教育委員会に招聘されて英語教師をしていたブラッド・トウルさんを採用。いったん祖国のカナダに帰っていたところを呼び戻した。現在、プロモーション事業部長を務める。

2つ目の成功要因として、受け入れ体制の整備がある。

受入整備を目的に旅行業を始めることになり、法人格(一般社団)を取得。宿泊の手配をはじめ熊野地域を旅するために必要なことの全てを代行している。

田辺市熊野ツーリズムビューローでは宿泊関係者や交通関係者、観光案内所のスタッフ、観光協会のスタッフ、田辺市役所観光担当者、熊野本宮大社(神職・巫女)に対して、延べ60回のワークショップを実施した。
外国人観光客を受入れるにあたり、何が不安か?何が課題か?どのように受入れるか?などの議論を重ねてきた。
プロモーション事業部長のブラッド・トウルさんのセミナーも好評だったそうだ。

熊野古道に点在する小さな民宿にも泊まれるようになっている。
昨年度の旅行業の売上は約9千万円だった。しかし利幅が薄いため、民間では難しく、中間的な組織だからこそ成立する。結果として熊野エリアに海外から足を運んだので、地域全体としては潤っている。

和歌山県には特区ガイド制があり、地元のガイド試験を通れば、通訳案内士の資格はなくてもガイドができる。現在、約80名が登録。ビューローのスタッフのうち4人が取得していて、通常は地元のガイド団体に仕事をお願いするが、対応が厳しい場合、出動することも。特にプレスツアーの際には活躍している。

熊野古道を中心にした戦略を打ち立て、民間であるからこそ、集中的なプロモーションや市を超えた広域連携も柔軟に対応。那智勝浦町や新宮市も熊野古道があり、さらに奈良県や三重県にもまたがる部分がある。熊野古道というキラーコンテンツを軸に連携している。

サンティアゴ・デ・コンポステーラの教会にて熊野の山伏がホラ貝を吹く
サンティアゴ・デ・コンポステーラの教会にて熊野の山伏がホラ貝を吹く
ツーリズムEXPOジャパンでのブース出展では、熊野とサンティアゴ・デ・コンポステーラが共同展示
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サンティアゴ・デ・コンポステーラの近隣の巡礼の道を散策
サンティアゴ・デ・コンポステーラの近隣の巡礼の道を散策
調印式・共同記者会見・現地調査等のため、サンティアゴ・デ・コンポステーラ市を訪問
調印式・共同記者会見・現地調査等のため、サンティアゴ・デ・コンポステーラ市を訪問

取材:やまとごころjp
(インバウンド業界のポータルサイト)
http://www.yamatogokoro.jp/